2010年3月31日水曜日

「ぼくは♂です」 宮沢駿

ぼくは、オオカミ28才 ♂ 名前のないぼくだった。
 でも、昔は、「ゴンタ」とよばれていた。なぜかその「ゴンタ」という名前がぼくの名前になっていた。もうずい分年をとっている。狩りが出来なくて最近のご飯は少ない。

 ある日ぼくの家に、一通の手紙が届いた。その手紙の内容は、


『サバクの向こうの遠い山のやぎです。
 この手紙を見ているあなたどうぞ友達になって下さい。』


という内容だった。実はゴンタは友達が、いなかった。
 昔は、名前が分からないほどオオカミがたくさんいたのに、遠い山のさらに向こうの山に住んだり、死んでいったり、そんなことがあって、ボクは、いつの間にか独りぼっちになっていた。オオカミのボクは、ヤギがエサだけど、友達ができるのはうれしい。そう思ったボクは、さっそく手紙を書きはじめた。


『サバクの向こうの遠い山のヤギさんへ。
 ボクは、オオカミだけどこわがらないでください。
 名前は、「ゴンタ」。
 あなたの名前と、得意なことなどあったら、また手紙下さい。』


という手紙を書いた。しかし、ゴンタは困ってしまった。なぜかというと、遠い山まで行く体力がないからだ。
 すると、おこり顔のラクダがゴンタに向かって、ドスンドスンドスンと、近づいてきた。ゴンタはふるえながらも、ラクダに、
「遠い山までこの手紙を届けてくれませんか?」
と、言ってみると、
「んじゃーいくらかくれたらやってやろう。」
この時代の金は、肉だった。
「じゃーいくらです?」
ボクは、聞いた。
「じゃー……2キロだなー。」
(うえーーそんなにーーーーーーーーーーーーーー)
と、ボクが心の中で思っていると、どうやらラクダは、それをボクの顔から読みとったらしく、いやな顔して去っていった。
 仕方なくサバクの向こうまで歩いていった。
 すると、グットタイミングの事に、ノホホーンとした顔のやさしそうなラクダがやってきた。でも、そのラクダは、ぼくをおおかみだとしってにげていった。
とても悲しかった。

(ぼくが、オオカミだからいけないんだ。ラクダに、にげられると、オオカミのエサのヤギも、きっと……………。)
と、ぼくは心の中で思った。

すると、!!!!!
のほほーんとした、ラクダが、Uターンしてこっちにもどってきた。そのラクダは無口のまま、ぼくの手紙を、持っていってくれた。食べるのかも知れないけれど、少し、うれしかった。


{その、数日後}
 ぼくの家の方に、ラクダが、歩いてきた。そのラクダの口には、何かをくわえている。紙?????????
ラクダは、無口だけど、笑っていた。そして、その口にくわえていた物を、ぼくにわたした。すると、そのラクダは、歩いていった。
ぼくは、(この前の、お礼を言わなくちゃ。)と思って、
「この前は、ありがとう。」
と言った。すると、そのラクダは、止まって顔を少し横に曲げたまま、
「また、いつでも。」
と、カエルがしゃべっているような声で言うと、また歩き出した。ぼくは、ラクダにもらったものをみた。すると、遠い山のヤギさんからの手紙だった。さっそく手紙を読んでみた。


『ゴンタさんヘ
 ゴンタさんは、オスですか? わたしは、メスです。
 名前は、「サクラ」です。優しいオオカミですよね??
 食べたりしませんか?
     こわがりや。サクラ より』


という手紙だった。ぼくは、少し不安になった。でも、友達になりたいと思う気持ちの方が、とてつもなく大きかった。ぼくは、その一心を胸に、手紙を書いた。


『遠い山のサクラさんへ
 「ぼくは、オスです。」こんど、サバクと遠い山の間を取って、 いっしょに、会いませんか? 楽しみにしています。
      願っている ゴンタ より』


(友達になれるかなあ??)
と思いながらも、ラクダさんにたのんだ。
 すると、早くも、サクラさんからの手紙が来た。とても、どきどきした。


『ゴンタさんへ
             いいよ。』


手紙は3文字の、手紙だった。たったの3文字だったのに、とてもとてもうれしくなった。


{次の日}
 今日は、いつもより早く起きた。少しねむい。
 だけど、うれしい。ぼくはもうずいぶん年だから、ラクダさんに乗せて行ってもらった。乗っているとき、とてもきんちょうした。ついた。
 サクラさんはもういた。まずは、ごあいさつ。
「ゴ、ゴンタです。」
ぼくは、一言一言言う事にきんちょうした。
「サクラです。」
サクラさんは、ぼくとちがって落ち着いていた。するとサクラさんが、
「今日、本当は、28才の誕生日なんです。」
といきなり言ってきた。ぼくは、おどろいた。こんなにステキなサクラさんが、ぼくと同い年なんて………。

{その夜}
 ラクダさんと、ぼくと、サクラさんで、サクラさんの誕生日祝いの、歌を歌った。
「ハッピーバースデーサクラさーん ハッピーバースデートゥーユ ー。」
サクラさんはとても笑っていた。
 最後に、誕生日プレゼントをぼく達二人からわたした。ラクダさんからは、そこら辺の葉っぱを合わせて、葉っぱのクサリ。ぼくからは、同じく葉っぱの指輪をあげた。サクラさんは、
「とてもきれい。」
と言っていた。ぼくは、うれしかった。ラクダさんもうれしそうだった。
 すると、サクラさんが小さな声でこう言った。
「こんなすてきな誕生日祝い、何年ぶりかしら。」
(ぼくは、サクラさんも同じ思いをしているのかなぁ)と思った。 実の事を言うと、ぼくも7才までしか誕生日を祝ってもらっていないんだ。今、誕生日を祝おうとしても、生年月日を忘れてしまったわけだから祝えない。
 じゃあ何で28才だって分かるかって。それは、1年1年は知っているから、1年たつと1才上になるということ。ぼくもこんな誕生日祝いしてほしいけどなぁ~。
 それからというと、サクラさんとはほぼ毎日会っている。たまに、食べたくなるけれど、ぼくはサクラさんと一緒にいるから、サクラさんにこう言われたんだ。
「ヤギとか、肉を食べるのはやめて。」
と言われてからというもの、ヤギといっしょの草を食べるようになった。意外と肉よりか草のほうが美味しかった。最初に食べた時は、(ゲロマズ)だったけどね。


 さて、ぼくの出番がやってきました。ぼくの名前は、
[ミス・カイセツバメ]私がやるこのコ~ナ~は、やくし語を皆さんにかいせつするコ~ナ~です。今、(ゲロマズ)とでましたが、(ゲロマズ)というのは、(ゲロ=ゲボ)ゲボをはくほどマズイ。
と言う意味です。OK?????????  よろしい。
以上[ミス・カイセツバメ]からの緊急ニュ~スでした。


 あれから何ヶ月かたって、初めての手紙の事をはなした。
「あのサクラさんから送られてきた手紙は、とてもうれしかった。 何よりあの、 『友達』 という言葉が今でも頭の中に残ってい るよ。」
ぼくは、あの時のことが今でも忘れられなかった。すると、サクラさんが、
「私はあの、 『ぼくは、オスです。』 という文字が、自信のあった7文字に見えてとても印象に残っているわ。」

 それからというとぼく達は、38才になっていた。
 あの誕生日祝いから、[10年]がたった。
いつの間にかラクダさんは、[ラクダ配達員]になり、今でも、セッカセッカと配達員の仕事をこなしている。時には、タクシーみたいに連れて行ってくれたり、とても便利。今は昔とちがって、「ラクダさん」ではなくて、「ラクダ配達員」と呼んでいる。
 ぼくとサクラさんも、「ゴンタ」、「サクラ」と呼ぶようになった。
ぼくとサクラは、あの誕生日祝いの10年後(9月28日)に結婚し、怒り顔のラクダさんとはすっかり仲の良い友達になった。
 結婚祝いには、怒り顔のラクダさんと、ラクダ配達員に結婚祝いをしてもらった。ウエディングケーキはとても大きくてとても美味しかった。とても楽しい1日だった。
 毎年9月28日には、2人だけではなく大勢の人に祝ってもらっている。そのときにもらえるプレゼントがとてもうれしい。最近は、ぬいぐるみ系や時計類が多い。
 ぼく達2人は、結婚してから1度もケンカをしたことがない。毎日とても幸せに暮らしている。

1 件のコメント:

  1. 遠く離れた、本来なら敵同士の2匹が、短い手紙で少しずつ心と実際の距離を縮めていく様子がとても素敵に描かれていますね。2匹の気持ちがよく伝わり、ドキドキしながら読みました。
    「ミス・カイセツバメ」突然の登場にびっくり!でも面白い!! こういう大胆なユーモア、大好きです。

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